強いチームはより強くなり 弱いチームは弱いまま である理由

誰もが自らの失敗を直視したくはない

何か失敗に直面した場合、人はリセットしたいという衝動にかられる。失敗をナシにしたい、なかったことにしたい、という思いにかられてしまう。失敗に向き合う度に、失敗時の負の感情が思い起こされてしまうため、目を逸らしたくなってしまうからだ。

しかし本当のリセットは次の成功率を上げることに寄与しないので、するべきではない。失敗から得られたものを基に、前回の試行の修正をするべきであり、それをなんども繰り返すべきである。

  • 「ゼロからやり直します」
  • 「一から出直します」

という言葉は過大評価されている。次回の成功率を上げるのであれば、前回の過程で得られたものをゼロとして扱わずに、むしろもっと効果的に用いるべきである。

失敗のメカニズムと人格の混同

掘り下げて考えていくと、この問題の本質は『試行の失敗』と『失敗者の人格の否定』を切り離して考えられずについ混同してしまうことにある。

  • 「あれが失敗したのは(実施者である)Aさんが慢心だったからではないだろうか」
  • 「これが失敗したら私の能力に問題があったと思われてしまうのではないだろうか」

こういう反応は、評価の対象が『試行そのもの』に向いておらず、『試行者』に向いてしまっている。

人は、自らの失敗に関しては外的要因に求めたがる。

  • 「景気が悪かった」
  • 「B社に出し抜かれた」
  • 「十分な時間がなかった」

しかし反対に、自らの成功に関しては内的要因に求めたがる。

  • 「あの時の自分の判断が正しかった」
  • 「地道に努力したことが報われた」
  • 「本来の実力を発揮できた」

最初に失敗をしない方がその後に成功しやすい

不都合な真実として、外科医やスポーツ選手を対象とした調査で、初めての大舞台でどのような結果を出したかが、その後の成功率に影響するという調査結果がある。

初めての大舞台で成功した場合はその後の成功率も高い。逆に、初めての大舞台で失敗した場合はその後の成功率が低い。

これは、前述の心理が働くからだ。失敗した場合は、失敗から目を背けたくなるため、自分自身の行動に対して客観的な評価をすることに大きな抵抗を感じてしまい、つい自分以外のものの外的要因にその理由を求めてしまう。

しかし逆に成功した場合は、自分自身の行動に対して評価しやすくなり、反省もしやすくなる。よかった面だけではなく改善できる面にも直視しやすくなるのである。

なので失敗をしても成功をしても、内的要因も外的要因も含めて客観的にプロセスを正しく評価し次回で修正する、ということを繰り返し継続できれば、成功率は上がるはずであるが、失敗の当事者は自分自身では失敗の原因を客観的に評価することは難しく、外的要因に偏って評価してしまう傾向にある、ということである。

『失敗』自体と『失敗から想起する感情』を切り離す

失敗は必ず起こるものであり、それ自体は避けがたいものである。時には失敗が大きな成功をもたらす有益なヒントになる場合もある。

問題は、失敗を分析せず失敗から正しく学ばないことであり、失敗自体と失敗から想起する感情を峻別し切り離して考えることができないことにある。

なので失敗者に対してかけるべき言葉は

「なぜ失敗したんだ?」

と失敗につながった行為に注意を向けさせるのではなく

「その失敗によって知ったことは何?」

と、失敗で得られたものに注意を向けさせる。

「なぜ失敗したんだ?」と聞くような、失敗につながった行為について注意を向けさせることは、人格と行為を同じ水準で評価していることを暗に示すことになる。行為によって人格を評価しているということである。

意図と行為は同じではない。意図は必ずしも行為に現れるばかりではない。意図していてもそのまま行為として現れるわけではない。なので失敗した行為や意図に注意を向けるのではなく、失敗の現象に注意を向けるべきである。

『失敗は連続する試行の一部である』という位置にまで失敗自体を格下げさせることが重要である。それにより人格と行為の間に距離を作ることができ、失敗の評価と人格の評価を切り分けて行うことを示すことができる。

そうなれば失敗への向き合い方が変わり、より良い将来を生み出す有益なものとすることができる。

強いチームはより強くなり、弱いチームが弱いままなのには、こうしたメカニズムも影響しているのだ。

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