書籍「超える技技術 -あなたはまだ自分を超えられる」の中で書いている、『第7章:欲しいものを求めよ。要求を言う者は好かれる。:要求術』についての追加の解説です。
多くの人は他人に要求することを躊躇います。 何かをお願いするということを考えただけでも不快感を覚え、どこか居心地の悪さを感じることになります。そのため、ほとんどの人は要求すらせずに、欲しいものを手に入れることを諦め、そして要求する人は嫌われるものだと、思い込んでしまいます。
実際に、「人はどのくらい要求を受け入れてくれるのか」、という実験を行った際、事前に被験者に「どのくらい要求にイエスと言ってもらえるのか」と見積もってもらったところ、多くの被験者が実際よりもかなり低く見積もりました。実験を行ってみて、思っていたよりも多くのイエスを貰えたと感じ、「世間も捨てたもんじゃないな」と、要求を受け入れてくれる人の多さに感動したということです。
そしてこれは多くの人の直感に反することですが、実は「要求をする」ということは、他人を喜ばせることでもあり、要求をする人の方が好かれる可能性が高いのです。
要求するということは、相手を頼ることでもあり、多くの人は頼られると嬉しいのです。そして他人を助けることで気分が良くなり、自分が行った支援によって相手の状況がよくなったことで相手が感謝してくれていると感じることで幸福感を覚えます。
もしあなたが要求しなければ、相手はあなたに支援をする機会をもてなかったでしょう。あなたが要求したからこそ相手はあなたを支援するきっかけを得ることができ、そしてその支援がうまくいったと感じられたなら、あなたは相手に感謝をし、そしてその感謝の表現が相手に伝わった時、相手は多幸感を得るのです。
要求をしなければ、相手はあなたが何をして欲しいと思っているのかを知ることはありません。要求をすればそれが相手に伝わります。そして相手があなたを支援するときに重要なのは、相手が自らの意思であなたを支援した、と感じることです。自発的に支援した、と感じられることが重要になります。もし自発的でなかった場合、相手はあなたに対して支援を行っても、満足感を得ることはないでしょう。
営業の現場でも、とりあえず「お客様の声を聞いてこい!」と、まずはヒアリング、と顧客を訪問し、「何がお望みですか?」「何かお困りのことはありませんか?」などと聞いて終わりの営業スタイルが横行していますが、このスタイルは顧客に何も要求していないため、顧客はウンザリしてしまいます。顧客は多くの営業マンから同じことを聞かれているのです。「こっちに質問をするだけで、何の解決策も持ってこない」と失望してしまうのです。
こういったコンサルティング営業が過大評価され、顧客の要望をヒアリングして、相手の課題を引き出すことばかりを考え、その要求に応える形でコミュニケーションを行なっていくのが定石とされていることが問題なのです。実際には多くの顧客はそのような毎回「ただ聞かれるばかり」という状況にウンザリしています。
毎回毎回、来る営業、来る営業に状況を何度も同じことを話されられる羽目になるので、ウンザリするのです。
では一体どのように提案・要求をすればいいのでしょうか。
要求をする際に、顧客にとって新しい情報や提案を持っていくのです。その情報や提案が顧客の要求に完全に合致していなかったとしても、新しい情報を持ってくれる営業マンに好意を持つようになります。人は新しいことが好きで、その新しい情報をもたらしてくれる相手を大事にするようになります。
要求する際は、相手にとって新しい何かが得られるように準備をして臨むのです。相手が知らないであろうこと、新しいことを提供する中で、要求をするのです。
事前に相手の状況をリサーチすることが大事なのは、この「相手にとって新たらしい情報とは何か」を決めるためです。ですので、提案の場で「あなたは何をこ困っていますか?」と聞くのはワンテンポ遅いのです。事前にリサーチをしておき、確信はなくとも「多分これは知らないだろう、新しいと思ってもらえるだろう」と予測して準備をした方がまだマシです。
顧客は、何度も「お困りのことはありませんか?」と聞かれて時間を無駄にしたくないと考えていますので、先にあなたから要求と新しい情報を提供するのです。ですので、常日頃から、多くの人が知らないであろう情報を収集して整理していつでも提案に差し込めるように準備しておきましょう。